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もう、ロックなんか聴くな! 岩見吉朗 著

岩見吉朗氏の文章「もう、ロックなんか聴くな!」がいつでも読めるだけのブログです。

もう、ロックなんか聴くな!            著:岩見吉朗

もう、ロックなんか聴くな!
★★★★★ もう、ロックなんか聴くな!   著:岩見吉朗 (1991)
Manic Street Preachers
このテキストは1991年のロッキング・オンに掲載されたものです(何月号かは忘れました)。著者の岩見吉朗氏は当時フリーの音楽ライターのはずで、既にROの編集部にはいなかったと思います。ブラウザ上で読みやすいように一部改行している部分があります。

Manic Street Preachers

もう、ロックなんか聴くな!

    著:岩見吉朗

 セックス・ピストルズの『アナーキー・イン・ザ・UK』を聴いて、とんでもなく興奮したのは中学一年生の時だ。全身が総毛立つ、なんてことが本当にあるとは知らなかった。金縛りというか、呼吸困難というか、大袈裟だとは思うが何かそんな感じだった。

 子供で、世間知らずで、凄く馬鹿だったので、こんなに格好いいんだからアナーキズムというのは、何よりも正しいことだと思った。辞書で引いてみたら「無政府主義」と書かれてあった。「無政府主義者」はアナーキストだ。よし、俺は将来アナーキストになろう! とそのとき思った。もっともクロポトキンも大杉栄も知らなかった。かと言って何の勉強もしなかった。その時そう思っただけだ。結局、その時自分にとって本当に大事なことは、柔道の黒帯を取ることだったりした。そして、そのまんまずるずる。

 今の私はアナーキストではない。それに準ずるような人間でもない。大概の人は、そりゃそうだ、と思うだろう。自分だって、今頃MSGで10日間連続ライヴをやってるはずだったんだ、とか言ってくれるかもしれない。そりゃそうだ。理想と現実どころか、妄想と現実にギャップがあるのは当たり前だ。今、必要なのは、より現実的な目標の達成および幸福の獲得である。うん、そりゃそうだ。当たり前だ。

Manic Street Preachers
 だが、多分そんな考え方は大間違いなのだ。どうして、理想でも目標でもなく妄想なのか。何のことはない、他ならぬ自分自身が妄想のレベルにまで貶めただけだ。黒帯を取っても、成績が一番になっても、総毛立ったりなんか全然しなかった。それなら、自分にとっての最高の生理に誠実であるべきだったのだ。あの時から15年、気が狂れそうなくらい沢山の時間がただ無駄に過ぎていった。悪夢のようだ。絶対、自分はアナーキストになるべきだったのだ。

 ロックンロールは無力だ。何も変えることが出来ない。今やそこらへんのガキでも当たり前のように口にする。だが、そんなのは大嘘だ。無力なのは、何も変えることが出来ないのは、いつだってリスナーの方だった。だって単純な話じゃないか。『アナーキー・イン・ザ・UK』を聴いて興奮した人間が、全員アナーキストになってたら世界は変わっていたはずなのだ。オナニーを覚えたてのガキなんかが聴くくらいなら、宮沢喜一が聴くべきだった。そしたら今日あたり、日本は無政府主義宣言をしていたかもしれない。リスナーが無力じゃなきゃ、世界はロックで変わるのだ。

 変革について語るのは、常に行動者の側だった。行動の幻想性無力性について告白するのも、まず最初は行動者ないしは元・行動者の側だった。それ以外の人間は、ただ聞いていただけだ。何もやっていないくせに、頭の悪い人間に聞き覚えの知識をひけらかしていただけである。あんなことをやっても無駄だ、あれだったら有効性がある、とか品定めを施しながら。結局自分はそうした人間達の側にいるとは、全くもって胸糞悪い。てめえがだらしないだけに尚更だ。

Manic Street Preachers

 お前らなんかと共存したくなかった
 お前らに教えられたのは
 窒息するほどの退屈さと
 安っぽい夢に漂流することだけ
 そんなものは何の役にも立ちゃしない
      (『モータウン・ジャンク』)


Manic Street Preachers
 マニック・ストリート・プリーチャーズの存在はある意味で屈辱的だ。彼らの登場は、まるで自分が置き去りにしたイメージが復讐にやってきたように思えた。『モータウン・ジャンク』は一聴した段階ではロック批判だ。今やモータウンはクズだし、ジョン・レノンは無効だ、と。だが「ロックンロールなんて何の役にも立ちゃしない」と、まごうことなきロックンロール・チューンの中で歌うことの倒錯をどう見るか。今やロックにはそれしか歌うことが出来ない?その通りだろう。でも、そうなっちまったのは誰のせいなのだ?ただの死体をあざ笑い、ただのレコード会社をクズだと叫ぶこと。それだけに目的があるとは思えない。

「お前らにとって、ロックンロールは何の役にも立ちゃしない。だからもう聴くなよ」。マニックスは多分そう言いたかったのだ。『アナーキー・イン・ザ・UK』を聴いてもアナーキストにならなかった奴には、ロックを聴く必要なんかない、ということだ。存在したくなかった「お前ら」とは、腐臭を放つロックンロール・ドリームであると同時に、それをBGMや慰み者の消費材として延命させる無為無策無力無能のロック・リスナーという意味も孕んでいるはずだ。リッチー・エドワーズ言うところの「無神経な中産階級」「安易に消費文化へ逃げ込む若者達」を「お前ら」はいつまで続けるのだ、と。

 評論家から、ビッグ・スターから、ロックは無力だって教えてもらったんだろう? じゃあ、聴くな……まさに最後通告のアジテーション。彼らはリスナーに、ロックに対してひいては自分自身の生に対してどう対峙するのか、という問いを突きつける。マニックスは存在そのものが、最高のラブソングだ。リスナーに向かって、ここまであからさまにコミュニケーションをもとめてくるロック・アーティストは稀である。

Manic Street Preachers
 そう遠くない将来にリリースされるだろう解散デビューアルバムの前後、マニックスに関して様々なことが語られると思う。過激な言動云々よりも、いいメロディのポップ・チューンを書けるバンドとして気に入ってますね、と訳知り顔の音楽至上主義者は言うだろうか。所詮表現スタイルが既成ロックの域を脱していない、とロック進化論者は言うだろうか。なんとでも言い様はあるだろうが、マニックスの問いに呼応するその人なりの生が提示されなければ、結局何も言わなかったと同じことだ。と言うか、マニックスに限らず全てにおいて、他社に発語するとはそういうことであるが。まあ、とにかく、どうなることか。

 いずれにせよ、今後の状況が全く楽観視出来ないものであることは、マニックスの知性なら自明だろう。だが彼らは今、面白くて仕様がないんではないか。俺達は動いたんだ。やりたいことをやっているぜ、と。

 全くその通りだ。結局、やりたいことをやるだけだ。ロックなんか別にどうなっても構わない。自分だけが心底気の済むように生きていたいのだ。何の言い訳も保留もない自己を組織し、誇り高く面白おかしく暮らしたい。ゴミのような15年を取り戻すためでなく、ここにいる自分の現在を余さず鷲掴みにするために。今まであった嫌なことや悔しいこと、そんなのはみんななかったことにしてやる。あとは、好き嫌いだけでやればいい。どれだけ人を殺したって、死んだら誰も覚えちゃいない。

 そうすりゃ多分、人生はバラ色だ。
Manic Street Preachers
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  1. 2006/03/11(土) 04:42:12|
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マニック・ストリート・プリーチャーズ

MANIC STREET PREACHERS
★★★★★ Manic Street Preachers (1991)
Manic Street Preachers
このインタビューは1991年のロッキング・オンに掲載された英メロディ・メイカー誌(というのがあった)の翻訳記事です。

Manic Street Preachers
N(ニッキー・ワイアー)「最高のバンドってのはどれも全てイカレてるもんさ。例えば、俺たちは薬について偉そうに常識論をぶつような奴らに全く興味が湧かないんだな。グショグショになって死んじまわない限り、俺たちの興味の対象にはならないんだ。でも奴らはそんなことはしなかったし、これからもそうならないことは火を見るより明らかさ。二十年以上に渡るロック・キャリア、なんてものにも全く魅力を感じていない。そっちの方が病気だな」
R(リッチー・エドワーズ)「人生が醜悪だなんて、そんなこたあ馬鹿でも知ってる。最近のバンドはやたらとその醜悪さを反映するだけで満足してるみたいだな」
N「俺たちはピート・タウンゼント以後の、その先を続けようとしてるんだ」
R「勿論、俺たちだって醜悪さを反映している。日常は全くの苦痛だらけで退屈で自分の誇りを傷つけられることばかりだ。あんなものがどうして好きになれるんだよ?」
N「要するに俺たちのやっていることはパブリック・エナミーと似たようなことだということなんだ。つまり、どう考えてみてもパブリック・エナミーの見てくれはすごいじゃないか。歌の内容もまたすごい」
J(ジェームズ・ディーン・ブラッドフィールド)「つまりはだね。オレたちにはロックンロールがこの先、どうなりうるものなのか、それがわかっているんだ。だからこそ俺たちはこうも多くの連中から忌み嫌われているんだ。っていうのはオレたちこそがロックンロールの現代的な解釈に成功しているからなんだよ。皆は俺たちが単にクラッシュやストーンズになりたがっていると簡単に考えているようだけど、でも違うんだ。俺たちにも昔の連中の長所は見えてるけど、でも、俺たちがなりたいのはそういうものじゃないんだ。俺たちこそが今日における、真の、最もモダンで華のあるロックンロールバンドなんだぜ」

Manic Street Preachers
●それじゃああなた達の存在をよそにハッピー・マンデーズが隔週単位であらゆる音楽誌の表紙を飾っている事実についてはどう説明しますか。
R「でも現実的に言って、この何週間でナンバーワンに輝いているのはアイアン・メイデンとクイーンなんだぜ。この事実だけでも音楽誌の言ってることなんてお笑いぐさだよ。ストーン・ローゼズだって『ワン・ラブ』でナンバーワンになれなかったじゃないか。皆が皆でなるって騒いでいたくせに、ならなかったんだ。じゃあどうしてならなかったのかって言えば、普通の人々は別に連中のことを気にもとめなかったからなんだよ」
N「とにかく俺がマンデーズの何が気に入らないかっていうと、はっきり言って連中が老いぼれで、しかもワーキング・クラスの袋小路にとっつかまったまんまだということなんだ。あれだけニヒリズムを撒き散らしやがって。せめて連中に続いたバンドがマシなものだったら連中にもそれなりに存在価値があるっていうもんだろうけど、実際に続いたのは何だ? シャーラタンズじゃないか。余計ヒドいってもんだぜ。プライマル・スクリームなんか初登場二十四位で翌週には消えてる様じゃないか。じゃあ、一体、この事実は何を意味しているのか?それはつまり彼らがいかに無用の長物であるかってことを証明しているんだ。とにかく、今は自己満足なわがままがはびこり過ぎているんだ。しかも悪いことに七十年代のようなスーパーグループまでいるんだからさ。あのエレクトロニックだよ。ああいうバンドはただのデブの忌々しい自惚れクソ野郎にしか過ぎないわけで、はっきり言って銃殺ものだ。単なる金持ち坊やのスペクタクル・オナニー・ショーだぜ。ジョニー・マーのあのライヴ写真、ギブソンで風車奏法までやらかしちゃって、チビの百貫デブのくせしてよ。全く悲惨だよなあ。あのヒドさと来たらエマーソン・レイク・アンド・パーマーに引けを取ってないよ」

Manic Street Preachers
●じゃあパブリック・エナミー以外に現役で認めるミュージシャンっています?
N「ガンズ・アンド・ローゼズだよ。パブリック・エナミーとガンズ・アンド・ローゼズさ。何故って連中こそがとんでもないスケールを持っているバンドだし、ドラマティックで、華があって、しかも現実に大勢の人間を惹き付けているからだよ。ガンズはもう千六百万枚も売ってて、ストーン・ローゼズはたかが百万も売ってないんだからな。はっきり言ってレコードもロクに売ってないバンドは持ち上げられるべきじゃないんだ」

●そんなこと言ったらリック・アストレーは一千万枚、トム・ジョーンズは三千五百万枚、クリフ・リチャードときたらこれはもう天文学的になってしまうんですけど。
N「つまりはくそシャーラタンズよりよっぽどマシなポップってことだろうが」

●しかし、そういうあなた達にしても、ファンがレコード店に殺気立って大勢詰めかけては『モータウン・ジャンク』を買っていくという状況を作り出せてはいないじゃないですか。
N「まさしくそういうことだね」

●じゃあ、結局は自分達も失敗していると?
R「そう、俺たちは失敗そのものだよ。で、それがたまらなく腹が立つんだ」
S(ショーン・ムーア)「で、これから一年経ってまだ同じようなことをウダウダやっているようだったら、その時は解散だ」
J「要はね、アルバムは一枚、しかも世界中でナンバーワンになる二枚組一つだけってことなんだ。そうじゃなきゃ駄目なんだ。アルバム一枚、それで解散だ。うまくいかなかったらどっちにしろ、解散だ。いずれにしろ、一枚出したら俺たちは終わりさ」
Manic Street Preachers
  1. 2006/03/10(金) 18:54:21|
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